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AIと共に火事に立ち向かう:消防署発!全自治体で使える!?職員向けのインパクトある教養資料

こんにちは。横須賀市中央消防署です。

今回は、消防署で行っている、ChatGPTを活用した 消防職員向けの教養資料作りの事例を紹介します!

消防での事例ですが、恐らく、消防職員だけでなく、法令に基づく業務を行っている全自治体職員の参考になると思います!


1.高まる消防への市民の期待

災害大国として知られる日本。台風、大雨、そして地震。
多発する災害に対応する消防への市民の期待は高まるばかりです。

消防の仕事は災害現場での活動のほか、火災を未然に防ぐために病院や飲食店、学校などの建物の検査を実施し、これらの建物が消防法令上、適切に維持管理されているか確認をしています。

これらの仕事は基本的に消防法に基づいて行っています。そのため、消防職員は消防法に精通していなければなりません。

2.市民の期待に応えるために~忠恕の意識~

さて、当市の上地市長が当市職員に示す言葉の一つに「忠恕(ちゅうじょ)」という言葉があります。「忠恕」とは自分の良心に正直に、真心をもって相手に接するということです。

市民の期待に応えることとは、各職員が正確な知識をもって「忠恕の意識」をもちながら業務を遂行し、市民の信頼を得ることだと考えました。

一方で、スピード感を求められる災害現場などでは消防法を見る暇はありません。最近では消防車にタブレット端末を積載している消防本部もあると思いますが、いかに最先端のデバイスが導入されようとも最後にものをいうのは各職員の頭の中に正確な知識があるか否かです。

現場では、頭の中に正確な知識がある必要がある

ただ、正しい知識を身に着けるためにはそれなりの時間が必要です。特に、着任間もない若い隊員にとって必要となる法令の解釈をすべて理解することは、非常に大変です。また、人事異動等でしばらく別の業務に従事するとせっかく身に着けた知識を失念してしまうこともしばしば、、、

でもなぜか、子どものころ「四字熟語を4コマ漫画でおぼえよう!」的な本でおぼえた知識は、大人になった今でも覚えていませんか。
(辞書で調べた四字熟語は調べたことすら覚えていないことも、、、)

やはり、インパクトのある文ほど記憶に残りやすいのではないでしょうか。 これに着目し、だれもが読みやすく、インパクトのある文をChatGPTに出力させよう!と思いまし た。

3.難解な法令や火災事例をChatGPTでわかりやすく出力

ChatGPTを使って、難解な法律や、覚えておくべき典型的な火災事例などを、インパクトのある文章に変換して、分かりやすくします。

例えば消防法第1条は、、、

この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。

消防法

とあります。一読しただけだと、なかなかわかりづらくありませんか? この文章をChatGPTに入力し、「だれにでもわかりやすいように出力せよ」と条件を与えて、出力し、 一部修正したものが以下のものとなります。

この法律は、火事を予防したり、気をつけたり、消火したりして、国民の命や体や財産を守るための法律です。そして、火災や地震等が起きた時には、被害を少なくし、また、けがをした人を適切に運ぶことや、社会の平和を守ること、みんなの幸せや福祉を良くすることを 目的とします。

ChatGPTが生成したものを一部修正

原文と比較するとだいぶわかりやすくなりますね。 


これを応用して、文章にインパクトを持たせて覚えやすくします。 例えば、キャラクターに火災の事例を語らせてみましょう。
(なお、以下の火災事例は架空の事例です)

例えば以下の架空の火災事例の文章は

雑居ビルの3階のエレベーターホールから火事が発生し、有毒ガスも発生していた。火は3階から 4階へと広がり、煙が店内へ流れ込んだ結果、店員や客が一酸化炭素中毒で死亡した。その混乱の 最中、3階の従業員3人が窓から落ちて骨折や打撲傷を負った。 法律では消防設備の設置が義務化されていたが、それが守られていなかった。

以下のようにChatGPTで対話口調に出力して、一部修正すると、読みやすく、印象に残るものになりました。

レオ:「ユキ、アキ、聞いて驚いたんだけどな~。雑居ビルの3階のエレベーターホールで火事が起きちゃったんだよ」

ユキ:「被害は?具体的にどうなったのですか?」

レオ:「火が3階から4階へ広がったらしくてな。それで、煙が店内に入り込んだ結果、店員や客が一酸化炭素中毒で亡くなってしまった。……」

アキ:「火災が起きても本来、消防設備があれば最小限の被害で済むはずなんですよ。」

ユキ:「もし、それが守られていなかったとしたら…もう、無理…想像したくない。」

レオ:「おいおい、でも実際、混乱の最中には3階の従業員3人が窓から落ち   て骨折や打撲傷を負ったみたいだぜ。それでさ、今回の火災を教訓に一緒に考えようぜ!動き出すことが大切だからさ!」

ユキ:「レオ君がそう言うなら…でも、どうしましょう…」

アキ:「じゃあまず、私たちができることから始めましょうか。具体的に   は、消防設備の設置の重要性を建物を管理している人たちに広めることですね。」

火災事例をもとにChatGPTで生成し修正 ※内容は架空です

この文を出力するために使用したプロンプト文は以下のものです。

###命令書
以下の制約条件と入力文をもとに3人の登場人物の[会話]を出力してください。
入力文をあますことなく詳細に表現し、[会話]を出力してください。

###制約条件
・文字数は5000文程度。
・登場人物は、レオ、ユキ、アキ。
・レオは、明るく、人気者でリーダーシップを持つ男性。
・レオは、セリフに「なんだけどな〜」「さ、一緒に考えようぜ!」をときどき用いる。
・レオは、他の2人を「ユキ」「アキ」と呼ぶ。
・ユキは、無口でクール。内心は繊細だが、周囲には滅多に見せない女性。
・ユキは、セリフに「それはあなたが言うこと?」「もう、無理...想像したくない」「でも、どうしましょう…」をときどき用いる。
・ユキは、他の2人を「レオ君」「アキさん」と呼ぶ。
・アキは、あまり前へ出ることがなく、温和で優しく、知識豊富な男性。
・アキは、セリフに「それは、大切ですね。」「あのね、こういうことなんだよ。」をときどき用いる。
・アキは、他の2人を「レオ兄さん」「ユキさん」と呼ぶ。

###入力文
雑居ビルの3階のエレベーターホールから火事が発生し、有毒ガスも発生していた。
火は3階から4階へと広がり、煙が店内へ流れ込んだ結果、店員や客が一酸化炭素中毒で死亡した。
その混乱の最中、3階の従業員3人が窓から落ちて骨折や打撲傷を負った。
法律では消防設備の設置が義務化されていたが、それが守られていなかった。

今回は架空のキャラクターですが、皆がよく知っているようなキャラクター等に語らせると、より一層伝わりやすくなります!

これを応用すると以下の説明文が

1949年1月26日早朝、現存する世界最古の木造建築物である法隆寺の金堂で火災が発生し、壁画の大半が焼失した。この壁画は長年、飛鳥時代の芸術を伝えてきたものだった。その焼損は日本国民に強い衝撃を与えた。このことから火災などの災害から文化財を保護する必要性について議論が高まり、1950年に文化財保護法が制定される一つの契機となった。1955年には文化財保護法が確立するとともに、日本国民への普及啓発事業が行われるようになった。その一環で文化庁と消防庁が文化財を災害から守るとともに日本国民の文化財愛護思想の高揚を図るため、1月26日を『文化財防火デー』と定めた。この日が選ばれたのは、法隆寺金堂が焼損した日であることや冬季が一年のうち最も火災が発生しやすい時期であることが理由である。
以来、毎年1月26日を中心に文化庁、消防庁、教育委員会、文化財所有者が連携し、日本各地で文化財防火運動が実施されている。

以下のように会話口調になり、わかりやすくなります。

太郎:「1949年1月26日に法隆寺の金堂で起きた火事を覚えてる?その時に壁画の大部分が焼失してしまったんだよ。あの壁画は飛鳥時代の芸術を伝
えていたのさ。」

次郎:「そうだったんですか。それは日本国民にとって大きな衝撃だったでしょうね。」

三郎:「そうです。この火災がきっかけとなり、文化財を災害から守るための法律が誕生しました。具体的には、1950年に制定された文化財保護法で
す。」

太郎:「それと同時に、文化庁と消防庁が日本国民の文化財愛護思想の高揚を図るため、その火事の日である1月26日を『文化財防火デー』と定めたの。」

次郎:「冬のこの時期は火災が発生しやすいから、きっと言葉だけではなく、具体的な行動で注意を促す日なんでしょうね。」

三郎:「その通りです、次郎くん。そして、それから毎年1月26日を中心に文化庁や消防庁、教育委員会、文化財所有者たちが連携して、全国で文化財防火運動が行われています。これにより、私たちの大切な文化財が火災などの災害から守られているんですね。」

ChatGPT

この文を出力させるために使用したプロンプト文は、以下のものです。

###命令書
以下の制約条件と入力文をもとに3人の登場人物の[会話]を出力してください。
入力文をあますことなく詳細に表現し、[会話]を出力してください。

###制約条件
・法改正の箇所を特に詳しく出力する。
・登場人物は太郎、次郎、三郎

###入力文
1949年1月26日早朝、現存する世界最古の木造建築物である法隆寺の金堂で火災が発生し、壁画の大半が焼失した。
この壁画は長年、飛鳥時代の芸術を伝えてきたものだった。その焼損は日本国民に強い衝撃を与えた。
このことから火災などの災害から文化財を保護する必要性について議論が高まり、1950年に文化財保護法が制定される一つの契機となった。
1955年には文化財保護行政が確立するとともに、日本国民への普及啓発事業が行われるようになった。
その一環で文化庁と消防庁が文化財を災害から守るとともに日本国民の文化財愛護思想の高揚を図るため、1月26日を『文化財防火デー』と定めた。
この日が選ばれたのは、法隆寺金堂が焼損した日であることや冬季が一年のうち最も火災が発生しやすい時期であることが理由である。
以来、毎年1月26日を中心に文化庁、消防庁、教育委員会、文化財所有者が連携し、日本各地で文化財防火運動が実施されている。

4.ChatGPT一長一短あり。だけども♪だけど♪

上記の出力は当署で行っているほんの一部になります。

ChatGPTはプロンプト文に応じ精度の高い文を出力してくれます。 ただ最終的には法令の意味合い等をきちんと出力しているか職員のチェックが必要です。

このように一長一短あるChatGPTですが、うまく使うことでインパクトのある教養資料を作ることができ、正確な知識を楽しく覚えることができます。

これは消防だけではなく、各法令や要綱に基づき業務を行っている全自治体職員でも活用できるのではないでしょうか?

採用後間もない職員は、法令や要綱を熟知するのに多大な時間と労力を要するものです。ChatGPTにインパクトのある文章を出力させ、教養資料として活用すれば活字だけの法令や要綱より短時間で効率よく吸収できると思います。

今後は消防法だけでなく他法令の解釈の出力や、画像生成AIが利用できるようになればイラストを交えた教養資料をつくることも視野にいれています。

(横須賀市中央消防署)


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